実際の症例と初診時のレントゲン写真
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この子は、年齢不詳のメスのネコちゃんです。4日前に子供が生まれたが、すべて死産で、それから元気食欲が無いとのことで来院されました。陰部からは排膿があり、エコー検査で子宮が腫脹していることから、子宮内細菌感染による子宮蓄膿症が疑われました。内科治療(点滴と抗生剤)で、元気食欲がてでくれたことから、一時退院となりました。なお、この時点では胸にはほとんど問題はありませんでした。
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心嚢内液体貯留時の状態
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9日後、元気食欲が無いとのことで来院されたときには、少しぐったりした感じがあり、再度血液・レントゲン検査を行いました。レントゲン写真では、心陰影の拡大が重度に認められ、エコー検査でも心臓周囲に液体貯留が認められました。すぐに穿刺して貯留液を抜き、検査したところ非変性性の好中球が大量に認められたことから、この時点ではネコ伝染性腹膜炎(FIP)を疑い、治療を行いました。
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穿刺液の色調の変化
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しばらく治療を行っていたのですが、状況は一進一退で、定期的に貯留液を採取していましたが、色調がどんどん変化し、膿のような状態まで変わってきました。
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細胞診断の所見
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これに伴って、細胞診断でも初期には認められなかった細菌が大量に認められるようになり、この時点で、子宮蓄膿症による菌血症(血液内に細菌が入っている状態)で、心膜炎を起こした可能性が極めて高くなってきました。
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手術時の所見1
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内科での治療は、不可能と判断し、すぐに開胸手術となりました。写真のように左下にして右側から胸を開く手術を行いました。胸を開くと非常に大きくなった心嚢膜があり、一部切開し、内部を確認すると大量の膿が認められました。
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手術時の所見2
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心嚢膜内を洗浄+綿棒で採取した時の写真ですが、異常なまでに膿が貯留していました。切開を広げ、心臓の周りにある心嚢膜を出来るだけ広範囲に切除しました。
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手術時の写真3
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ほぼ心嚢膜が摘出され、心臓が露出されました。心臓周囲の膿を出来るだけ採取+洗浄し、閉胸しました。
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切除した心嚢膜と病理組織検査
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切除した心嚢膜を検査したところ、感染による心膜炎とのことでした。
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治療後の写真とレントゲン
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術後は非常に元気食欲が出て、術後3日で退院となりました。それから1週間後の写真ですが、体重も増え、非常に良好です。レントゲンでも問題ありませんでした。犬や猫の子宮蓄膿症はよくある病気ですが、これに随伴したこのような病気は非常にまれと思われます。しかしながら、このような病気もありますので、子宮の病気があって治ってきていても経過はきちんと診ていかなければなりません。もし、子宮の病気が過去にあり、その後様子が悪くなるようでしたら、すぐにご連絡くださいね。
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