心臓弁膜症の状態
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心臓疾患には、先天性(生まれつき)と後天性(生まれてから)の2つの病気がありますが、犬の心臓病では、発生率は圧倒的に後天性が多く、その中で一番多いのが僧帽弁閉鎖不全といわれています。では、なぜおきるか?ということですが、様々な原因が指摘されつつも、はっきりしたことはまだ解明されていません。いずれにしても、この病気は心臓の各部屋を分けるドアが変形してしまうために起きる病気と思ってください。
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レントゲンとイラストによる比較
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レントゲンを比較してみると、正常と異常ではかなり形が異なることがわかります。イラストと見比べるとわかるのですが、異常心臓では、血液が逆流して流れるため、左心房という場所が非常に大きくなり、これが気管を圧迫して、咳が出やすくなります。
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弁膜症の治療1:血管拡張薬
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治療は外科と内科がありますが、一般的には内科療法が主体となります。第1選択薬は血管拡張薬です。これは、血管を道路にたとえると、道路(血管)が細くなってしまっているために、車の渋滞(うっ血)がおきています。これを改善するために、道路(血管)を広げてあげて車(血液)の通りを良くします。
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弁膜症の治療2:利尿薬
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第2選択薬は利尿剤です。これは車(血液)の量を減らすことによって、渋滞(うっ血)を解消するためのお薬です。量が多すぎると脱水を起こしてしまうため、十分注意して使用します。主なお薬はラシックスです。
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弁膜症の治療3:強心剤
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第3選択薬は強心剤です。これは、警察官(心臓の収縮力)の力を借りて、渋滞(うっ血)を解消するお薬です。主な薬はジゴシンですが、副作用の問題や効果が一定しないケースもあるため、使用が限られることが多いです。
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ピモベンダン
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以前は、上記の薬が一般的だったのですが、最近強心剤で非常に優れた効果を発揮してくれるものが出ました。これが、上記のピモベンダンというお薬ですが、副作用がほとんどなく、それでいて、非常に効果があるのですが、すこし高価であるため、アメリカの学会誌では銀の弾丸(A Silver Bullet?)と揶揄されていました。(詳しくは題名をクリックすれば論文(英語)が読めますよ)
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実際の症例
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この子は、12歳のミニチュアシュナウザーです。各種検査から右心不全(三尖弁閉鎖不全)が疑われたため、通常通り上記3種類(血管拡張薬、利尿剤、強心剤:ジゴシン)を使用したのですが、治療に反応せず、7〜10日毎に胸水を抜いていました。しかしながら、ピモベンダンを使用したところ、非常に良好となり、約2ヶ月経過していますが、まったく胸水も抜かず、状態は非常に良好です。もし、心臓病と診断が出て、まだこのお薬を使用していないようでしたら、担当の獣医さんと相談しては早めに使用してあげてくださいね。
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